
クリティカル・パス・メソッド(=CPM)においては最遅・最早をアクティビティを多数のタスクに階層ごとに洗い出して、それらの関係性を整理した上で各タスクの工数等を見積もって矢印で線引する手法ですが、プロジェクトを進行させるには重要な要素である余裕、すなわち、プロジェクト・バッファーを設けてプロジェクトを管理する手法がクリティカル・チェーン・プロジェクトマネジメントといわれるものです。
身近な例でクリティカル・パス・メソッドについて考えてみることにしましょう。まず、カレーライス完成までの工程と所要時間を下記の表のように洗いf出します。その結果、以下の通りです。
No | 工 程 | 先行工程 | 後続工程 | 所要時間(分) |
1 | お米を研ぐ | ー | 3 | 3 |
2 | 野菜を切る | ー | 4 | 10 |
3 | お米を炊く | 1 | 8 | 45 |
4 | 野菜を炒める | 2 | 6 | 5 |
5 | 肉を焼く | ー | 6 | 3 |
6 | 具を煮る | 4,5 | 7 | 10 |
7 | カレー粉を入れて煮る | 6 | 9 | 5 |
8 | ご飯をつぐ | 3 | 9 | 2 |
9 | ルーを入れる | 7,8 | ー | 2 |
この工程表をもとにクリティカル・パス・メソッド手法に準拠して図式化してみます。
【何が判明されるか?】
❶このプロジェクトを短縮させるには赤線で示したクリティカルパスの作業時間を短くする必要があります。その理由は野菜を切る等の工程を短くしても
、カレーは早く出来上がらないことです。
❷頑張ってルーを作ったとしても、ご飯が炊ける20分前にはルーが出来上がってしまいます。こうなれば、タイミングが悪く、まずい結果を招いてしまいます。
【仕事でどんな風に役立つか?】
❶所要時間が複数の作業(工程)が存在する仕事をする前に推測可能であることです。
❷どの工程が全体の所要時間を支配している工程は何であるかが判明します。その結果、工程単位にプライオリティ付けができます。
❸クリティカルパス以外は、あえてゆっくり作業したほうがいい場合もあることを考慮すべきでしょう。
次に考えることはプロジェクト進行に必要な資源を最低限に抑制した上で、少しでも危機管理を最小化させるための余裕をもたせるべきという点です。
では、カレーライスではなく知り合いを招いてパーティを開こうと企てて、出し物はカツサンドを作って皆さんに食してもらうようにしました。カツサンドを作る工程を洗い出してみましょう。
No | 工 程 | 所要時間(分) |
1 | 豚肉をカットした上で、塩、胡椒し、小麦粉、卵、パン粉を付ける。 | 20 |
2 | キャベツをみじん切りしてマヨネーズを和える。 | 10 |
3 | バターとマスタードをパンに塗る。 | 5 |
4 | サラダ油を熱してカツを揚げる | 20 |
5 | サンド用にカットして仕上げ | 5 |
計 | 60 |
ここで、余裕をどの程度みるかという問題ですが、通常、それぞれの工程での余裕率を20%とするのが普通であるため、全工程における余裕率を除去した場合は48分となります。これがこのプロジェクトのバッファーとなり、実際の工程の進み具合を見ながら、12分のプロジェクト・バッファーの一部を取り崩して問題になっている工程に割り振ってプロジェクトを進める手法を採ります。図にすると以下のようになります。
なぜ、このような管理手法を採用するかを見ていきましょう。人間の習性として目標に向かって進んでいく習性があります。そこで各工程ごとに余裕を含めた形で見積もって計画を作成します。人間は作成された」計画をできる限りそのとおりに実行しようとして作業を進めます。ほら、思い出してください。夏休みの宿題のことを・・・。期限ギリギリになるまでは結構緩んでしまったことを・・・。逆に早く終った場合などは知らん顔して報告はしないという狭さが出たりします。この人間の習性を巧みに採り入れたのがCCPMなのです。
次に、プロジェクトをタスクごとにブレークする方法がWBSと呼ばれるもので、このWBSを明確に分解したうえで、個々のタスクの進捗がすべて順調に行くと仮定して、それこそ”ギリギリ”の計画を立案することをABP(=Aggressive but Possible)、つまりぎりぎりの計画といわれるものです。ここで重要なことはどのようにして余裕(プロジェクト・バッファー)を捻出していくかという点です。
【プロジェクト・バッファー捻出の手順】
❶まずはWBSをきっちりと展開します。
❷展開が済めば、各タスク単位に所要量を弾き出して、その合計値を正規の計画値とします。
❸弾き出した所要量を再度見直して潜んでいる余裕を除去してギリギリの計画を立案します。
❹最後に正規の計画値からギリギリの計画値を差し引いた結果をプロジェクト・バッファーとしてプロジェクト進行を準備を図ります。
この4つの手順の中で、最大の難関は❸の手順です。なぜ難関なのかは手順の行う人に依存するためです。この問題は解決にはキリがありませんので、大概の場合は工程にかかわらずに一律、正規の計画値の20%を余裕とした方法が大半を占めているようです。以下がその例です。
具体的には、あるプロジェクトを構成しているタスクが4つあるとします。合計値が3000,バッファーを600除去したものとすると、実行予算は3600ということになります。プロジェクトの進捗状況は以下の表のようだとすれば、バッファーの残量は300ということになります。
ここでは、タスク単位にバッファーの使用量を行っていますが、理想をいえば、タスク単位に月単位を加味して使用量を管理していくことが望まれます。