目次
行政書士が法人設立の依頼を受けた場合、一般的にはどのような処理手順を辿るのかを考えてみましょう。 通常、以下のような手順を踏むのではないでしょうかということで、以下の手順を前提にシナリオを展開します。
① 依頼内容確認 及び 打合せ
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② 設立法人の情報の確認
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③ ②設立法人の情報の確認をもとに必要な書類を作成
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④ 書類を法務局へ提出(司法書士等と連携)
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⑤ 必要に応じて開業支援コンサルティング など
中でも、③の書類作成では、何種類もの書類を正確に作成する必要があります。ただ、毎回完全に最初から作成するというよりも、それぞれの書類には決まったテンプレートがあり、クライアントごとに異なる項目(法人名、法人所在地、設立日など)だけを、テンプレート内の必要な箇所に転記していく作業の繰り返しになるのではないかと考えられます。
RPAによる自動化後の作業概要
では、この「法人設立」業務に、どのようにRPAを活用していくのかを考えてみます。
① 依頼内容確認 及び 打合せ ⇒ ② 設立法人の情報確認 ⇒ ③ 設立法人の情報確認をもとに必要な書類を作成 ⇒ ④ 書類を法務局へ提出(司法書士等と連携 ⇒ ⑤ 必要に応じて開業支援コンサルティングなど
これらの流れの中で、RPAを活用する箇所は③の書類作成部分です。人がコピー&ペースト等で転記していた作業を、丸ごとRPAに任せることができます。ということで、順を追ってRPAによる自動化の行程をみていきます。
自動化行程1)必要な情報の参照元となるデータを準備する
RPAが転記の作業をする際には、必要な情報の参照元となるデータが必要となります。通常はExcelファイルのデータとなっています。上記②「設立法人の情報確認」の段階で、以下のようなExcelファイルを準備しておき、クライアントに直接入力してもらう形が最適です。
もし、クライアントから手書きで情報を受け取る場合などは、スタッフの手で事前にExcelに入力する作業を済ませておきます。
また、書類のテンプレート側にも一工夫が必要です。テンプレート内の転記を要する部分に、予めロボット用の目印を付けておきます。
例)転記を要する部分は全て【】で囲う、等
【法人名】・【法人所在地】・【設立日】等
◆自動化行程2)RPAでシナリオを組む
参照元のExcelファイルの準備ができた場合、いよいよRPAでレシピ(シナリオ)を組みたてていきます。以下がシナリオとなります。
①テンプレート内の目印を付けた文字列(置換前文字列)と、その目印箇所に記入すべき顧客情報(置換後文字列)とを、置換前 → 置換後 が対応するよう一覧で表示する。
②「置換前文字列」を「置換後文字列」に一括で置き換える。
③ 置換が完了したら、適切な名前を付けて保存する。
このようなシナリオを準備できたら、あとは、実行ボタンを押すのみです!
◆自動化行程3)完成した書類をチェックする
RPAが作った書類と、行程1で準備した参照元のデータとを照合し、間違いがないか念のため確認をします。RPAは指示通りにミスや漏れなく実行するため、チェックの負担も軽く済みます。これで工程は完了です。
ということは、一度このRPAシナリオを組んでおけば、また次回、別のクライアントの法人設立で書類作成をする場合においても、必要な情報の載ったExcelファイルさえ新たに準備すれば、あとはRPAを実行するのみ、という工程で事足ります。すなわち、省力化及び効率が大幅に向上します。
RPA導入の効果やメリット
PAの導入により、どのような効果やメリットがあるのか、Before→After形式で整理してみます。
<< Before >>
「法人設立」の書類作成において主な課題となる点が以下のような課題です。
課題① 同じ項目を違う書類に何度も転記する必要がある
課題② 抜け・漏れ・ミスがあってはならない
課題③ 書類の作成にチェックの時間を含めて30分前後が必要となる
課題④ 専門性の高いスタッフと一般のスタッフとの間で書類の精度や所要時間に差ができる
<< After >>
導入後の主なメリットをまとめると以下の通りです。導入前の課題を見事にクリアしているのがお分りいただけるかと思います。
メリット① 大量の転記作業から解放される
メリット② 抜け・漏れ・ミスを防げる
メリット③ 人手による作業時間が5分以下になる
メリット④ 作業の精度や所要時間にバラつきがなく、常に質の高い書類を短時間で作成できる。
メリット⑤ 削減できた時間を付加価値の高い業務に使うことができる。
特に、生産性向上が最大の課題(生産性の式は、「成果物/経営資源の投入量」で表し、生産性向上のためには、効率的に成果を大きくすることが重要)となっている昨今において、⑤のメリットは非常に大きいものがあります。
◆まとめ
皆様もご存知の通り、開業時というのは、クライアントのモチベーションも高い時期である一方で、不安も非常に大きいタイミングです。多くの対話や支援が必要とされています。だからこそ、ロボットにできることはロボットに任せ、人は人にしかできないこと(対話・発案・コンサルティング等)に注力していくことが肝要であると考えます。
◆補足
こちらのロボットで作成する書類は、皆様の事務所の株式会社・社団・合同会社用の書類にカスタマイズして使用することも可能です。