1990年代後半から2000年代前半、NTTの影響力は確かに大きいものでした。特に通信技術及びネットワークにおいては顕著であらゆる部分に現れていました。
NTTの戦略
例えば、LANケーブルに関してAタイプとBタイプの2種類があり、国際的にはAタイプが主流なのに対して、NTTがBタイプを採用したしたことから日本ではBタイプが主流として取り扱われています。通信では、世界の規格で3G・4G・5Gと進化していますが、4GはNTTが開発した3.9Gが4Gに格上げされたと言われています。現在でも、NTTのIT関連技術は日本トップレベルにあります。にも拘わらず、そのNTTが1990年代後半にインターネットの普及に関して結果的に大きな失敗をした訳です。その要因として、NTTはISDN(デジタル回線)を全国に普及させる計画をもっていたためです。ADSLという高速回線のブロードバンドが欧米を中心に普及し始め日本にも進出しようとしていたが、NTTがISDNを普及させるためにADSL進出を阻止していましたが、その結果、ADSLが日本で使用できるようになったのは遅く2001年頃だと記憶しています。このことが、インターネットの普及に大きな遅れとなり、世界の流れから遅れる事態が発生しました。1本の電話線で電話とインターネットの両方を同時接続できるISDN(デジタル回線)という当時画期的な通信を開始する計画に固執した訳です。
携帯電話の進化
1990年代後半から2000年代は、日本でも世界レベルと同じく携帯電話が普及していましたが、日本では i-mode という、当時としてはとても使いやすく便利な機能が爆発的に普及し気づいた時には皆様ご存知のガラケーと呼ばれ、独自に進化した携帯電話になっていました。i-mode はとても良い機能で日本人に合っていたようですが、長年使用しすぎたために世界の進化から取り残された訳です。このことが原因でスマートフォン普及が遅れてしまいました。特に高齢者はデジタル・デバイドに陥ってしまったのです。
政治家の高齢化
ITイノベーションには、政治の力も必要だと考えます。残念ながら、日本ではパソコンを使用しない政治家がIT大臣になるような国であるため、ITイノベーションを進めるのにいろいろな困難が伴います。また、日本は他国に比べ高齢の政治家が多いのでITの進化に対する意欲が弱く、消極的な人が多いのではないかと考えます。つまり、政治家のITリテラシーが低いことが原因です。
国民性
トラブルを嫌う日本人の特性が考えられます。「パソコンがなくても生きていける」と訴えうそぶく人がいました。間違っていません、確かにそうです。しかしながら、拒否し続けると進化がなく周りから取り残されることになります。仕事に対しても影響が出るかもしれません。周りは関係なく独自の生活レベルを維持するのであれば問題はありません。しかし、より便利な生活や時間の短縮・経費の削減・ビジネススタイルの変化など時代の変化であり、ITの進化は必要だと考えています。これには様々な理由が考えられますが、安定を求める国民性がIT後進国になった原因の一つかもしれません。
また、キャッシュレスを拒否し現金派が多い国民であることも原因になっています。ITリテラシーを向上させる努力も必要です。ITの進化には、トラブルが不可欠です。これは理解しなければなりません。例えば、一部の医療のトラブルを本音では進化の過程と考えるということを関係者から聞いたことがあります。
最近のシステムについて考察
一般の人は、国が作成する最近のシステムやアプリのトラブルは開発業者(下請けメーカー)のレベルが低いとか、プログラム設計やシステム連携に問題があることなどが原因だと考える人が多いと思います。しかし、それ以前の問題であり、なぜそうなるのかを考える必要があります。
国産のシステムでも優秀なシステムはあります。国が管理するシステムにトラブルが多いのは、私自身の経験から開発業者のレベルや連携ではなく予算に問題があると考えています。
私自身が携わった経験から国レベルのシステム開発は、かなりの大人数で設計・作成・検証・管理します。大手生命保険会社のシステム開発でさえ3フロアーで数百人規模でした。
個人的に良くできていると評価している国のシステムは、「e-tax」です。小泉政権の肝いりでかなりの予算で作成していると思います。大手銀行のシステムトラブルも同様システム内容に見合った予算が必要になります。提携・合併により複雑なシステムを求め逆に予算を少なく見積もると必ずといっていいほど、トラブルの原因になります。
個人的に最も優れたシステムと考えているのが、JRA日本中央競馬会のシステムです。電話・インターネット投票などは素晴らしく良くできています。競馬場内でもトラブルは見たことがありません。どこかの銀行とは大違いです。私の知り合いにJRAシステムの仕事を請け負っていた人がいましたが、報酬が半端ない金額でした。莫大な予算だと聞いています。良いシステムを作るにはそれなりの予算が必要です。少ない予算では粗末なシステムになりトラブルも多くなります。10人でシステムを構築するか、100人でシステムを構築するかの違いは誰でも分かることです。
私の経験から、ITリテラシーの低い人ほど、システムに経費をかけようとしません。予算(経費)とリスクのどちらを優先するか・・・。
これは、私個人の見解であり内容を保証するものではありません。様々な考えがありますが、私が長年やってきたIT関連の仕事を通して感じたことを記載しています。異なる考えの方は、内容を無視してください。→ その3に続きます。
[…] アメリカには天才を見出し、天才を育てるためのプログラムが存在します。日本は天才を凡人に合わせ、時に迫害する教育をしています。つまり、「出る杭は打たれる。」という方向性は2023年の現在でも変わっていません。非常に憂うべき事態だと考えます。よく言われることは、「不平等も平等なり!」という諺があります。人それぞれ個性があります。これらの点をかみしめる必要があります。 → その2に続きます。 […]