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本当に英語を話せる人は極端に少ない。びっくりです。筆者の体験から言いますと、ある日アメリカに約1年出張を命ずるという指令を受けました。しばらくすると近隣に英会話塾があるので出張するまでの2週間、そこで英会話の勉強をせよと言われてやってみました。結果はほとんどダメでした。何故なのかな・・・?と考えましたがよくわかりませんでした。自分なりに考えて、まず頭の中が英語になっていないことが一番の要因だと気づきました。それからというものは英会話に関する本を漁り目を通すもダメでした。その後さまざまな経験を重ねてかなり印象に残ったことは、12年前にある人からインドネシアに行って現地の社長を補佐業務依頼の話がありました。現地の社長曰く「赤ちゃんでも英語は話せる」と。この言葉奥が深い。身の回りはすべて英語であることがキーポイントといえます。例えば、中国語やインドネシア語を聞き流していると想像してみてください。単語の意味もわからないのに聞き流したところで、しゃべれるようになるとは思いません。大切なことは、理解してインプットすることです。 英語をただ聞き流すだけでは英語のインプットになりません。
たくさん聞き流せば話せるようになる。あまり聞きなじみはないと思いますが、「第二言語習得」という、人が言語を習得するプロセスを明らかにする学問です。この第二言語習得の観点から考えると、なぜ日本人が英語が話せないのかが見えてきます。日本人の英語学習には次の4つの誤解があるのではないかと考えます。現地でネイティブの友だちができたら、その会話の中で学ぶことはたくさんあるでしょう。この状況下では「こうしゃべる」というのがわかっていくからです。
英語学習で陥りがちな「4つの誤解」
従来の英語教材には自発的アウトプットが圧倒的に足りません。例えば、英会話教室などのテキストで、
「テキストのAの単語をBの単語に置き換えましょう」
「主語をCからDに入れ替えましょう」
「普通の文を疑問文にしてみましょう」
というのは自発的アウトプットではありません。テキストの答えに合わせて自分が話しているだけです。実際のところ、英会話には答えはありません。センテンスを覚えるということは、言わされていることなので、それでは話せるようになりません。そこにとんでもない誤解が生じるのです。人間の脳というのは、自分が発言できることは、ほかの誰かが同じことを言っても必ず理解できるようになっています。自分で「I like dogs.」と言えれば、ネイティブが「I like dogs.」と発したときに聞き取れるようになります。
誤解① たくさん聞き流せば話せるようになる
英語を毎日聞いていると、英語を勉強している気がします。とはいえ、わからないまま聞いていても“ただの音”にすぎません。だから、たくさん英語を聞き流しても、英語を話せるようにならないのです。英語を聞き流すというのは取っかかりやすいやり方であるため、みなさんそこから始めるのだと思いますが、日本人の多くは英語学習の入り口を間違えているのではないでしょうか。
誤解② 間違ってはいけない
なかなか英語が上達しない人に多いのが、「間違ってはいけない」ことを気にしすぎることです。これは「情意フィルター仮説」という理論と関わっています。「情意フィルター仮説」とは、人は感情の状態によって、言語の吸収率が5%にも90%にもなる、つまり負の感情を持っていると言語の吸収率が下がる、という理論です。「情意フィルター仮説」は、第二言語習得研究の第一人者で言語学者のスティーブン・クラッシェン氏が提唱した説のひとつです。これが実は日本人が英語を話せない大きな要因になっているといっても過言ではありません。”完璧さを求めずに間違ってもいいや”という気持ちでいくべきです。「a」や「the」や三単現の「〜s」も気にせずやってみてください。そのことで吸収率が上がり、いつの間にか「a」や「the」や三単現の「〜s」も使いこなせるようになります。もしあなたが間違えたことで、バカにしたり、笑ったりしてくる人がいたら、しめしめと思ってください。その人はおそらく「間違ってはいけない」という呪縛にとらわれている人。今後、その人は英語が話せるようにはならないでしょう。一方で、あなたはすぐにその人に圧倒的な差をつけることができます。なぜなら、その人の吸収率は5%なのに対して、あなたの吸収率は90%、つまり18倍も成長スピードが違うわけなのですから。
誤解③ 長く美しい英語でなければいけない
あまり知られていない事実ですが、そもそもネイティブの英語は簡単です。それなのに、みなさん難しい英語で表現しようとする傾向があります。このことも情意フィルターを厚くして吸収力を下げてしまう原因です。難しい英語など話す必要はありません! 例えば、「通勤する」と言いたいときに、日本人だとあえて「commute:通勤する」を使おうとしますが、ネイティブは「go to work」や「go to the office」と言います。
通勤にバスを使うか、それとも電車を使うかを伝えたければ「I go to work by train.」でかまいません。「通勤する」と「会社に行く」は意味が同じです。それであればcommuteが出てこないから話せない、となるよりも、知っている単語で「go to work」と言えたほうがいいに決まっています。それに対してネイティブが「それはcommuteって言うんだよ」と言ってくることはまずありません。そのほかにもニュースなど公式の場でたまに出てくる「diligent:勤勉な」なども日常会話では日本語でもあまり使わないのではないでしょうか?
ところが、英会話を始めたばかりの方などはcommuteやdiligentがパッと出てくるようになることを目指している傾向にあります。とくに、これまで勉強してきたという人に多いです。同じ言葉の日本語と英語を比べた際、日本語だとこれくらい話せるけど、英語はこれくらいしか話せないとなるとストレスがたまります。ならば、日本語力を下げればいいのです。例えば、「いただく」という日本語を英語で言おうとすると単語が出てきませんよね。そこで、「もらう」という簡単な日本語にしてみたら「get」と言えるのではないでしょうか。そこに気がつけば、もっと英語でのコミュニケーションが楽しめるようになるでしょう。
このように「ルート」を変えてあげるだけで、あなたの達成したい目標に確実に近づきます。
誤解④ 暗記すれば話せるようになる
英語を学んでから使おうという人が多いのですが、正しくはその逆です。つまり、「英語は使いながら学ぶ」ことが肝要です。
英語力を高めるのに暗記する必要はありません。英語は文字ではなく状況から習得するものであり、そのために必要なのが「スパイラル学習」という理論です。「スパイラル学習」とは、人は「“状況”から何度もくり返すことによって言語を習得する。」という理論です。
例えば、
「I play soccer at the park.」
「I play soccer at school.」
「I play soccer with my friends.」
「I can play soccer very well.」
「I like playing soccer with my friends at school.」
このように次々と状況を変えると理解が深くなります。ここで過去形の「I played soccer yesterday.」にしても「play soccer」は残っていますよね。こうして単語をひとつずつ増やして、成長していくことができます。
スパイラル学習はその言葉が何回も出てくるので、勝手に覚えます。だから、英語学習であるべきは「暗記禁止」。覚えようとなどしなくても勝手に覚えるからです。大人は単語を1回で覚えようとしますが、そもそもそれは無理な話。スパイラル学習で何度も使うほうが定着率が格段に上がり忘れなくなります。数をこなすほど間違いも増えてくる。こうして間違いにも慣れてくるので情意フィルターも下がり、英語力の吸収率も上がっていくという流れです。
→ どうすれば短期間で効率的に実用的な英語を使えるようになるか