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生成系GPTとは自然言語処理の分野で使用される機械学習モデルの一種で、Generative Pre-trained Transformerの略(=GPT)をいいます。GPTは、大量のテキストデータを学習して、そのデータのパターンや構造を理解することで、自然な文章を生成することが可能となります。GPTが使用しているアーキテクチャはTransformerといわれるニューラルネットワークアーキテクチャを使用しています。このTransformerは文章の文脈を理解し、単語や文の関係性を捉えるための仕組みを有しています。ということで、GPTは、このTransformerを事前に学習させることで、一般的な文章生成の能力を発揮します。また、生成系GPTは、いろいろな応用が考えられます。具体的には、文章の要約や翻訳、質問応答、文章生成などのタスクに利用されたり、チャットボット、或いは、仮想アシスタントとして使用されることも考えられます。ただし、生成系GPTはあくまでモデルが学習したデータに基づいて文章を生成するため、時には不正確な情報や不適切な表現を生成することがあります。そのため、生成された文章を適切に検証する必要があることを肝に銘じることです。
では、GPTの学習効率を向上させるためには、どのような方法が良いのかを述べてみようと思います。GPTの学習効率を向上させる手法として、以下のような方法があります。
[方法1] ・・・ データの拡張
[方法2] ・・・ 蒸留
[方法3] ・・・ 逐次的な学習
[方法4] ・・・ 転移学習
以上、4つの方法によって学習効率を向上させる試みが継続されています。
データの拡張
データの拡張とはData Augmentationとも言われ、GPTの学習データを増やすために、既存のデータに対してさまざまな変換や操作を行います。例えば、文章をランダムに入れ替えたり、一部の単語を置き換えたりすることにより、新しいデータを生成していきます。こうすることにより、GPTはより多様なデータにさらされ、汎化性能が向上します。データ拡張は、主に新しい機械学習 (ML) モデルをトレーニングするために、既存のデータから新しいデータを人為的に生成するプロセスをいいます。 モデルでは、初期トレーニングには大規模で多様なデータセットが必要ですが、データサイロや規制、その他の制限により、十分に多様な現実世界のデータセットを調達することは困難な場合があります。データ拡張は、元のデータに小さな変更を加えることで、データセットを人為的に増やします。生成系人工知能 (AI) ソリューションは現在、各種業界で高品質で高速なデータ拡張に使用されています。
蒸留
蒸留とはKnowledge Distillationとも言われ、単純には液体を沸騰するまで加熱あるいは減圧して蒸発させ、その蒸気を冷やして再び液体にすることを言いますが、大規模なGPTモデルを訓練するためには、膨大な計算リソースが必要です。しかし、大規模なモデルを小さなモデルに蒸留することで、計算コストを削減しながらも性能を維持することが可能です。蒸留では、大規模なGPTモデルの出力を教師データとして使用し、小さなモデルを訓練します。
逐次的な学習
逐次的な学習とはIncremental Learningとも言われ、大規模なデータセットを一度に学習するのではなく、データを複数のバッチに分割して順次学習する手法です。これにより、計算リソースの制約を緩和しながらも、モデルの性能を向上させることができます。
逐次的な学習の特徴として、以下のようなことが言われています。
- 多くのメモリを使わずに計算できる(ビッグデータの処理に向いている)
- データが増えるのに合わせ、随時、モデルを更新できる
多くのメモリを使わずに計算できる(ビッグデータの処理に向いている)
世の中で、「ビッグデータ」が注目され始めた時に、その処理方法が課題になりました。 一括学習では、一時的にコンピュータのメモリを大量に使う必要があるため、ビッグデータの処理は無理でした。すなわち、いくつかの解決策のひとつが逐次的な学習でした。逐次的な学習では、1回前の学習結果、つまりモデルのパラメータを、新しいデータを使って修正します。 この計算の時に、過去のデータのすべてをもう一度参照する必要がなく、過去のデータで作ったモデルのパラメータだけを参照するため、 メモリをあまり使わずに済むアルゴリズムになっています。
データが増えるのに合わせ、随時、モデルを更新できる
一括学習では、学習が1回終われば、基本的にそのモデルを使い続けます。 「データが増えて来たため、モデルを作り直して、精度を上げたい」、という場合は、改めて過去からのデータを準備して、学習の作業をやり直す必要がありました。一括学習では、メモリを多く使うため、学習のやり直しができなかったり、できたとしても非常に時間がかかったりします。 一方、逐次学習では、常に最新状態のモデルを準備することができます。
転移学習
転移学習とはTransfer Learning(=TL)とも言われ、他のタスクで事前に学習されたGPTモデルを初期化パラメータとして使用し、新しいタスクに適応させる手法です。事前学習済みのモデルは、一般的な言語の知識を持っているため、新しいタスクにおいても効果的な初期化パラメータとなります。あるタスクで事前にトレーニングされたモデルを、関連する新しいタスクに合わせて微調整する機械学習 (ML) 技術です。新しい ML モデルのトレーニングは、時間と労力を要するプロセスであり、本番環境に移行するまでに大量のデータや計算能力、および数回の反復が必要です。代わりに、組織は TL を使用して、関連するタスクについて既存のモデルを新しいデータで再トレーニングします。たとえば、機械学習モデルが犬の画像を識別できれば、犬と猫の特徴の違いを強調する小さな画像セットを使用して猫を識別するようにトレーニングできます。
トランスダクティブ転移学習
転移学習(Transfer Learning=TL)とは、ある領域で学習したこと(学習済みモデル)を別の領域に役立たせ、効率的に学習させる方法です。人間に置き換えると、「友達がまとめたテスト勉強用ノートを借りる」「姉が実践してうまくいったダイエット法を真似する」というイメージです。
トランスダクティブ転移学習では、特定のソースドメインから別の関連するターゲットドメインに知識を転送し、主にターゲットドメインに焦点を当てます。ターゲットドメインのラベル付きデータがほとんどまたはまったくない場合に特に便利です。トランスデューティブ転移学習は、以前に得た知識を使用してターゲットデータについて予測を行うようモデルに求めます。ターゲットデータはソースデータと数学的に似ているため、モデルはパターンを見つけて実行速度を上げます。
たとえば、製品レビューでトレーニングされたセンチメント分析モデルを、映画レビューの分析に適用することを検討してください。ソースドメイン (製品レビュー) とターゲットドメイン (映画レビュー) は、コンテキストと詳細が異なりますが、構造と言語の使用方法は似ています。このモデルは、製品領域での感情の理解を映画の領域に適用する方法をすぐに学習します。
帰納的転移学習
帰納的転移学習では、ソースドメインとターゲットドメインは同じですが、モデルが完了しなければならないタスクは異なります。事前トレーニング済みモデルはすでにソースデータに精通しており、新しい機能に向けてより速くトレーニングできます。帰納的転移学習の例としては、自然言語処理 (NLP) があります。モデルは大量のテキストで事前にトレーニングされ、帰納的転移学習を使用して感情分析などの特定の機能に合わせて微調整されます。同様に、CNN の有名ネットワークである VGG のようなコンピュータービジョンモデルは、大規模な画像データセットで事前にトレーニングされた後、オブジェクト検出を開発するために微調整されます。
教師なし転移学習
教師なし転移学習は、帰納的転移学習と同様の戦略を使用して新しい能力を開発します。ただし、ソースドメインとターゲットドメインの両方にラベルのないデータしかない場合は、この形式の転移学習を使用します。
まとめ
これらはGPTの学習効率を向上させるために一般的に使用されている手法です。ただし、最適な手法はタスクやデータに依存するため、具体的な状況に応じて適切な手法を選択する必要があることがポイントです。