スマートフォンやタブレットの急速な普及により、消費者は「いつでも、どこでも、好きなときに」買い物を楽しむことが現代では出来るようになってきました。そのため、小売業者は消費者の購買行動や嗜好の多様化に対して、様々な販売チャンネルを準備し、一貫性のある購買体験の提供が求められてきています。日本では2013年年末に、セブン&アイやイオンなど国内トップの小売企業が相次いで取組み強化を発表したことから注目されています。ということで、オムニチャネル・リテイリングに取り組む企業が急激に増えてきています。ツイート、Facebookのいいね!などのソーシャルメディア情報と顧客リスト、過去の購買履歴、ポイントカードの会員情報などを照らし合わせた上で、最適なネットでのプロモーションキャンペーンを決定します。さらに、ネットと店舗内の情報を統合、比較分析し、消費者の行動を先読みすることで在庫を管理し、欠品の回数も減らすことで商機を最大化させることに成功しています。
オムニチャネル戦略
オムニチャネル戦略というと通常、チャネル、在庫、顧客データを統合するためのシステムや設備の整備といった技術的な側面に注目されがちですが、顧客経験価値(カスタマー・エクスペリエンス)を高めることにより、ブランド・ロイヤルティを獲得したうえで、ブランド・エクイティ(=ブランドが持つ資産価値のこと)を高め、最終的にはLTV(=顧客生涯価値)を向上させていく取組が重要だと考えます。LTV向上に繋がるブランド体験を提供するためには、多様化する「個客」の行動や心理を「理解」することが最も重要ではないでしょうか? 自社の持つオンラインデータ、オフラインデータ、そしてソーシャルメディアなどからのデータを統合分析することで顧客を知り、顧客目線でシームレスなコミュニケーションを設計していくことが、これまでにない消費体験の提供を目指すオムニチャネル戦略の本質なのです。
なぜ注目されているのか
チャネルの定義は販売活動における消費者との接点です。実店舗やカタログ、パソコン、スマホなど、チャネルと言ってもさまざまなものがピックアップされますが、オムニチャネルとは、お客さまが各チャネルの違いを意識することなく、商品を購入したりサービスを受けたりできる状態のことをいいます。例えば、下記のようなことが挙げられます。
●情報源のデジタル化 ・・・ お客さまが情報を選ぶ
●口コミの重要性 ・・・ お客さまの評価がブランドを作る
●ニーズの多様化 ・・・ お客さまの体験価値が重要
このように、お客さまとの接点が多様化する状況においては、お客さま一人ひとりの満足度が益々重要となってきており、チャネルを横断してお客さまにアプローチをするオムニチャネルが注目される所以といえます。
オムニチャネルのメリット
実店舗で確認した商品をその場で買わずに、ECサイトでより安い価格のものを購入するショールーミングと呼ばれる行動が増加しています。これは、小売業者にとっては非常に大きな課題となってきています。例えば、ある店舗で見た商品について説明を受け、購入を決めたとします。しかし、スマートフォンなどで検索した結果、他店ECサイトで同じ商品が安く販売されているのを見つけました。そこで、店舗ではなくそちらで購入するといった行動を取るのです。このときに、ECサイトでも自社を選んでもらえるように価値を提供することがショールーミング対策となります。店舗から自社のECへの動線を作ったり、ポイントを共通化したりといったことが対策を講じることがポイントとなります。こういった消費行動に対するアプローチに関しても、お客さまを実店舗へ誘導するといった流れができるオムニチャネル化が有効であるといえ、これこそが、オムニチャネルのメリットなのです。
マルチチャネルの違い
マルチチャネルとは、オムニチャネルのひとつ手前の段階のイメージのことです。例えば、実店舗とECサイトを用意するように、複数のチャネルがあり、お客さまが求める情報や商品を提供する状態を言い表します。すなわち、具体的にはECサイトはもちろんのこと、SNSやメルマガ、テレビコマーシャルなど、様々なチャネルからお客さまにアプローチするのがマルチチャネルです。そこから、さらに発展した戦略がオムニチャネルです。
まとめ
実店舗に求める商品を探しに行った際、在庫がなかったためにECサイトにて検索し、購入することはマルチチャネルの範囲内です。しかし、そこからさらにECサイトで検索した商品の支払いを店舗で済ませ、受け取りを自宅で行えるというように店舗とECサイトの購買体験を繋ぐことがオムニチャネルになります。以上がまとめとなります。