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筆者の50年以上に亘る開発現場の経験からいえることは、日本人はITに弱く、日本はIT後進国になっている理由として4つあると考えられます。
1.日本人は技術を軽視し、かつ、サービスをも軽視するため
「出来上がった、質量をもつ物品」ばかりを尊重し、才能・スキルのような目に見えない技術を重要だと捉えることはほとんどありません。つまり、質量をもつ物品ばかりを重要視していることからで、目に見えないサービスを軽視し、その上、消費者側と雇用者側の多くが「タダでサービスされて当たり前」だと考えているが日常的な現象となっている風習がある。
2.日本人は英語が苦手で、プログラム開発との相性が非常に良くないため
筆者の50年以上に亘る現場の経験から、以下のことが顕著といえます。
- プログラミング言語はなんといっても英語が圧倒的主流。
- プログラミング言語の資料や論文も英語で記述されていることが多い。
- ITのイノベーションに関する最新ニュースも英語が主流。
- オープンソース化したソフトウェアの共同開発のための世界中のネットコミュニティーにおいても、多くの場合で英語でコミュニケーションが取られています。
- アメリカのような英語圏の国の国民は、英語と親和性が高いプログラミング言語を理解しやすく、ITの周辺資料やニュースも苦もなく吸収できるため、プログラミングと非常に相性が良いといえます。
- その一方、日本の学校教育では受験用英語をいやいや覚え込まされるだけであり、英語でのオーラルコミュニケーションも壊滅的にダメです。
- 高校や大学を卒業した後は、英語を綺麗に忘れてしまうという人がほとんどを占めています。
→ 英語の文章を理解するのに英語で文章を読み、英語をそのまま理解することが肝要だといえます。プログラミング言語においても同じことがいえます。いちいち和訳せずに英語でそのまま理解することが重要です。
3.日本人は保守的気質を強く持ち、革新性が重要なITとは相性が非常に悪いため
「古くさい管理システムを刷新して、手間をはぶこう」といった考えや動機が進化の原動力になります。ITを進化させるためにはこれまでの常識を打ち破ろうとする大胆さや、多少の失敗をともなう試行錯誤が不可欠です。しかし、日本人は保守的気質を強くもっているため、変化や失敗を嫌い、ITを毛嫌いすることが非常に多くなります。
4.日本のIT業界がブラック化し、人が集まらなくなるため
以上のことから
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- 日本ではITエンジニアが軽んじられ、欧米のそれと比較して平均年収も格段に低い
- 日本ではITとITエンジニアに敬意が払われないため、現場でもぞんざいに扱われる傾向にある
- 業界を取り巻く構造的欠陥からアンマッチが発生して、ITエンジニア達が健康被害やうつ病などで潰されても、それが大きな問題として報道されない。
ネット上では、IT業界=かなりのブラック業界であり近づくべからず、という認識が以前から知れ渡っています。日本では就活生や転職者に、プログラミングという仕事やプログラマーやシステムエンジニアやネットワークエンジニアという職種に、悪いイメージが定着してしまっています。
日本ではそもそもIT業界がいちじるしく不人気であり、新規参入者が減り、深刻な人手不足状態にあるため、日本のIT業界が弱体化していく状況にあります。
「日本人はITに弱い」と実感する日常の場面
「デスクトップPC」「ノートPC」を所有していない若者割合が、海外の国のそれよりも大幅に高い。スマートフォンでソーシャルゲームのプレイやSNS利用のような消費行為はできるが、PCを用いた生産行為は全くといっていいほどできない、というタイプの人達が多い。職場で、ハンコによる承認作業という前時代的な企業文化がずっと続いているクレジットカードを信用せずに使おうとしない人達が、現代でもまだまだ大勢いる姿が見受けられます。
日本のIT企業で、多重下請け構造と偽装請負が横行していて、上流工程企業が中小企業のITエンジニアから金銭を搾取しようとするばかりで、業界そのものが発達しない。
eスポーツを差別し、なかなか受け入れようとしない。電子決済の普及によるキャッシュレス化が、国民の不安感などを原因にして遅々として進まない。物理的な形をもたないサービス(ソフトウェアなどのIT系製品も含む)を日本人は軽視し、タダで提供するのが当たり前、という意識が根強く残っている。例えば、
▶ YouTuber
▶ アフィリエイト(ブログなどに商品広告を掲載し、仲介料を得るビジネスのこと)
これらに理解を示そうとせず、頭から嫌悪している。
スマートフォンの用途が、主にソーシャルゲームであり、スマートフォンを使って建設的な行動を取ることがほとんどできない。日本企業がAI開発のエンジニアを募集する際、年俸額や待遇が、アメリカ企業がAIエンジニアを雇用する条件の半分以下である場合がほとんどです。
日本人のITスキルの自己評価は先進国の中で最も低い
- 「デジタルテクノロジーのスキルの程度」について、日本人は「素人」と「中程度」であると自己評価した人の割合は合わせて58%にのぼり、先進7カ国(日本・シンガポール・オーストラリア・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ)の中で、ITスキルについての苦手意識が最も高いと判明した。
- 「ITスキル習得」について、日本人は「関心がない」と回答した割合が16%にのぼり、先進7カ国の中で最も割合が高かった。
- 日本の職場のIT環境についても、業務用のデバイスやアプリケーションについて「かなり古い」と「2~3世代遅れ」の回答を合わせて36%にのぼり、他国よりもかなり高い回答割合になった。
- IT先進国のアメリカにおいては、「デジタルテクノロジーのスキルの程度」は「熟練」と「エキスパート」と回答した人を合わせると77%にものぼる。日本では「熟練」と「エキスパート」と回答した人を合わせると42%にとどまり、アメリカの結果と大差を付けられる結果となった。
有能な人たちは、学閥を駆使し社内政治が得意な経営層になります。先輩を否定するようなことには挑戦しません(しない理由を考えるのは一流)。彼らは先人たちが作った仕組みのお守りを仕事とし、「動いているものは触るな」を言い訳にしながら、結果的にIT投資を軽視してきたのです。IT部門の人たちが、趣味の延長でコンピュータをいじっており経営層と話が通じにくかったことも遠因になっているかもしれません。日本は先進国のうちでも特に高齢化社会が進んでいる関係で、保守的思考はとても深刻です。新しいことを理解できないのは、説明する人間の怠慢だと信じています。今後がますます危ぶまれます。
定年まで波風を立てないようにします。出向先の子会社が決まるのを窓際で待っています。他にも、1989年頃の通商問題でTRONなど世界の覇権を狙えるような技術に関してはアメリカが圧力をかけてきました。このような外交圧力で標準を狙える技術は阻止されます。彼らは東洋人に対してはフェアに対応しません。
一言で言えば、目で見て確かめる文化であるためです。モノ造りで成果が上がったのは、目で見える製品だからです。目に見えるものは共有が容易であるため、10人の凡人が1人の天才に勝ります。一方、ソフトウェアは目で見えません。目で見えないモノは共有が難しい。この分野では、10人どころか、100人の凡人が集まっても、1人の天才に勝てません。頭の中身は共有できませんから。あなたが想像力豊かであるなら、それを言葉で伝える限界も知っているはずです。以上がITの後進国の要因といえます。
[…] これは、私個人の見解であり内容を保証するものではありません。様々な考えがありますが、私が長年やってきたIT関連の仕事を通して感じたことを記載しています。異なる考えの方は、内容を無視してください。→ その3に続きます。 […]