「神経発達症(発達障害)」は子どものときから見つかることもあれば、大人になってから気づくこともあります。毎日の暮らしのなかで、学校や職場で、失敗を繰り返すなどの困りごとに直面していませんか? その困りごとは神経発達症(発達障害)の特性によるものかもしれません。ADHDは、「発達障害」のひとつです。不注意や落ち着きのなさ、衝動性が特徴ですが、単なる個性としてとらえられ、ADHDと気づずにそのまま大人になってから初めて気づくこともある発達障害です。ADHDとはAttention-Deficit / Hyperactivity Disorder」という英語の略語で、日本語では「注意欠如・多動症」と呼ばれています。つまり、ADHDはかんたんにいうと、「不注意」や「多動・衝動性」を特徴とした、発達障害のひとつです。
ADHDを持つ子どもは、「忘れ物をよくする」「じっとしていられない」「おしゃべりが過ぎる」などの行動があらわれるため、日常生活や学校生活で様々な困難を抱えることがあります。そのため、ADHDの子どもの特性について十分に理解し、接することが肝要です。症状の状態によっては、困りごとを軽減するための行動の介入や、こころの発達を支援するための早期の治療が必要なケースがあります。
大人になると、子どもの時にみられた「多動性・衝動性」は、一見目立たなくなります。しかし、内面での落ち着きのなさが残っているため、待つことにイライラしてしまったり、人の話を最後まで聞けず、さえぎって一方的に話してしまうようです。「不注意」は、仕事でのケアレスミスや物忘れ、遅刻などで現れるため、仕事に支障をきたし社会生活がうまくいかなくなるケースがあります。すなわち、大人のADHDの場合は、「不注意」が多くなる傾向にあるようです。マインドワンダリング(さまよう心)といって、「考えがまとまらない」、話の要点が絞れないため、「相手に話が伝わらない」などといったコミュニケーションに困って適応障害になったり、うつ病と間違えられたりすることもあります。適応障害、うつ病、不安障害などを合併することがあります。こうした問題から、ストレスを抱えたり自己否定が強くなることで、適応障害、うつ病やパニック障害など、二次障害を発症するケースも少なくありません。とくに、女性の場合に多いようです。ADHDの現れ方が、男性と少し違い、グレーなADHDのため悩みを心の内に抱えて困りごとが増えストレスが悪化することがあります。ADHDの傾向によって生きづらさを感じた場合は、早期に専門医による診断をおすすめします。
ADHDの強みと弱み
強み
さまざまな考えが浮かびやすく、アイデアを豊富に出すことができる
興味のある分野には高い集中力を発揮できる
人とのコミュニケーションが得意である
行動力、決断力がある
大胆な行動・発言が人を惹きつける
弱み
遅刻したり、大事な予定を忘れてしまったり、重要な書類をどこかに置き忘れたりすることなどがある
注意力散漫、集中力が持続しない、落ち着きがないためにケアレスミスが多い
興味のない分野には集中して取り組めない、関心を持てない
マルチタスクが苦手で、複数の作業を同時並行で行うことができない
計画を立てることやじっくり考えることが苦手で、優先順位を立てられず見立てが甘い傾向がある
思いついたことを素直に発言してしまい、周囲を戸惑わせてしまう
困りごと
ケアレスミスが多い
忘れ物、失くし物が多い
マルチタスク(複数の作業を同時進行すること)ができない
集中力が続かない
物事を先延ばしにしてしまいがちで、納期を守れない
物事の優先順位をつけられない
思いついたことをすぐに発言したり行動したりする
向いていない仕事
ADHDに向いていない仕事 | 仕事の種類 |
マルチタスクの仕事 |
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ミスが許されない仕事 |
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単純すぎる仕事 |
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向いている仕事
ADHDに向いている仕事 | 仕事の種類 |
デザイナー系の仕事 |
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プログラマ・エンジニアの仕事 |
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アーティスト関係の仕事 |
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自分の好きを追求する仕事 |
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まとめ
ADHDが報告された頃は、ADHDは子供特有の病気と考えられており、成長に従って多動が目立たなくなることから、ADHDの特徴も消失するものと考えられていました。しかしADHDの児童の追跡調査から、成人期に達しても多くの患者では不注意などの症状が残ることが明らかになりました。このことは医学界でも論争を呼んでいますが、現在では発達障害の特性はおおむね生涯に渡って持続するものであるということが受け入れられています。